乱れる

乱れる [DVD]乱れる [DVD]
(2005/07/22)
高峰秀子、加山雄三 他

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乱れる」(感想
(監督)成瀬 巳喜男
(主演)高峰 秀子

戦争で、半年で夫を亡くし、嫁ぎ先の酒屋を独りで切り盛りしている
高峰秀子演じる未亡人・礼子。
戦災で焼け野原になったところからバラックを建て
今の店の状態まで持ってきた、彼女の平凡な生活。

しかし、スーパーの進出、再婚話など
少しづつ、今まででは感じられない波紋のような揺らぎが
彼女の生活を、知らず知らずのうちに少しづつ変えていく。

そして、大学を出たにも関わらず、のらくらと遊びほうけている
加山雄三演じる義弟・幸司の将来も心配だった・・・。

この映画はリンクを貼らせて頂いている鉦鼓亭さんの“セピア色の映画手帳”で
絶賛されておられたので観てみました。

本当にラストが凄かったです!!

ストーリーの骨格・内容自体はある種、メロドラマ的に映るかもしれません。
しかし、それだけではなく
何度も提示される“時代の変化”あるいは“世代の断絶”を繰り返し描いています。

スーパーの台頭により、圧迫される個人商店であったり。
半年の結婚生活だけで、その後の十八年間を嫁いだ家の商店の再建を成し遂げた貞節なヒロイン。
それとは対照的に、自由恋愛を謳歌する義理の弟のガールフレンド。

嫁ぎ先を一心に守ってきたつもりが
草笛光子演じる長女からは再婚話を持ちかけられ
(実は、新しく店を取り壊し、スーパーを建てる計画を練る夫あり)
同じく、自身の再婚をあっけらかんと喜ぶ白川由美演ずる次女。
できた嫁に遠慮しながらも、決断を先延ばしにし
娘の意見に右往左往する三益 愛子演ずる義母。

ある意味、『東京物語』の変奏とも取れる展開。
三女優も見事に、自分の役割を演じてくれます。

そんな家族に嫌気がさし、もし、自分がスーパーをやるのであれば
一番、この店(家)の為に働いてきた(犠牲になってきた)
義姉・礼子を重役に据えるべきだと訴える、加山雄三演じる義弟・幸司。

そして、自分が、転勤が理由で、会社を辞めたのは
礼子の傍に居たかったからだと告白する。

いよいよ、自分の居場所を失ってしまったと思う礼子は
実家に帰ることを、皆に告げる。

この時の姉妹達の対応も、おろおろとするだけの母親も
見事で、しっかりとプロとしての演技を見せてくれます
(もう、本当に、草笛光子・白川由美の小憎らしさは半端ないです(笑))

そして、実家に帰る礼子を送ろうと
列車に乗っている幸司の姿が・・・。
実は、ここからが物語の本筋といいますか。

鉦鼓亭さんもお書きになられているように
ここでの、礼子と幸司の座席の距離が幾度も変わり
近づいていくのは二人の心理的距離もあらわしているのだと思います。

そして、初めて 礼子の心の中に生じた“乱れ”
様々なものから解き放たれつつある心理状態の描写。
ただ、最後の最後で、礼子の口から出た言葉は
幸司を強く傷つける・・・・

そして、ラストシーンへ。

これも鉦鼓亭さんがお書きになられていますが
黒澤作品の『天国と地獄』はまたこの作品とは違い
リズムが刻まれているというのか。

犯人の慟哭・嗚咽・悲鳴→閉じられるシャッター→そこからも洩れ響いて来る、犯人の悲鳴。
何の感情も読み取れないままの権藤の背。

そして、“終”の文字。

この作品の場合は「お連れ様が・・・」といったあと、止まらない。
(普通、止まるだろ?!と思うのですが、あえて手の届かないものの象徴のように)
幸司には走っても、礼子は近づくことができません。

髪の乱れ、表情だけで
ヒロインである礼子の様々な感情が画面に露わになり
観ている人間があまりの、緊張に耐えかねて、そろっと息を吐こうとした瞬間に
出る“終”の文字。

思わず、吐こうとした息を、吸うべきなのか、吐くべきなのか
分からなくなるぐらいの困惑。

コンマ何秒の狂いもなく、計算されつくしたラスト。

観客が(無意識・意識的に関らず)想像していたその後の展開。

ヒロインが泣く、もしくは号泣、はらはらと涙を落とす。
もしくは対面する。
結んだ紙縒りをとる等、考えていたであろう今後の展開を
消し去る程の、圧倒的とも言える終わり方。

・・・呆然とした後に、賛辞しかでてきません。

ここで終わるからこそ、この作品は、ある意味、別のレベルの作品に昇華したと思います。

鉦鼓亭さん 凄い作品を教えていただいてありがとうございました。
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

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コメント

 きみやすさん、こんばんは

僕の「記事」の所は「冷汗三斗」なのですが、ありがとうございます。
そして、貴重な時間を使って頂いた事に感謝!です。

『東京物語』の変奏>僕も、それを感じていて、中盤まで、これは成瀬版の「東京物語」なのかと不安になりました。

列車道中>
深夜のホームで、能天気に「駅蕎麦」を掻き込んでる浩司、それをハラハラしながら見る礼子。
浩司の居眠り顔を見詰めてる礼子の雰囲気(涙を流す前)
これも素晴らしかったです。

思わず、吐こうとした息を、吸うべきなのか、吐くべきなのか
分からなくなるぐらいの困惑。>
正しく、的を得た表現で、本当に「その通り」でした。

幸司には走っても、礼子は近づくことができません。>
最後に橋を渡って「向う岸」へ行ってしまうのが象徴的でした。

ラスト>
ヒロインに泣かせもしない、崖に立たせもしない、観客のカタルシスには問答無用。
暫く経ってから、「監督、鬼だ!」と思いました。(笑)

ここで終わるからこそ、この作品は、ある意味、別のレベルの作品に昇華したと思います>
僕も、全く同感です。
くず折れて泣く所まで行ったら、「駄作」の烙印を押されてたと思うし、観ても記憶に残らなかったと思います。
そう考えると、ここまで創っても「傑作」と「駄作」の差は紙一重の所に有るんだ、と思って怖くなりました。

「高校三年生」>好きな歌だったんですけど、きっとこれから、このメロディを聞く度に「忌々しい気分」になるような予感がしています。(笑)
by: 鉦鼓亭 * 2013/10/11 01:05 * URL [ 編集] | UP↑

鉦鼓亭さん こんばんは!!

> 僕の「記事」の所は「冷汗三斗」なのですが、ありがとうございます。

いえいえ。実際、自分の書きたいことを鉦鼓亭さんがしっかり記事にされているので
正直、こちらの方が冷や汗もので、書くことがないくらいです。

> 『東京物語』の変奏>僕も、それを感じていて、中盤まで、これは成瀬版の「東京物語」なのかと不安になりました。

『東京物語』の紀子がどちらかというと、妖精のような現実感のない
出来すぎた、かつ、自己の将来に展望を持たないようにしている人物だったのに対し。
礼子は現実味のある、出来すぎた人物だったように思います。

> 列車道中>
> 深夜のホームで、能天気に「駅蕎麦」を掻き込んでる浩司、それをハラハラしながら見る礼子。
> 浩司の居眠り顔を見詰めてる礼子の雰囲気(涙を流す前)
> これも素晴らしかったです。

ここら辺は、義理とは言え、姉としての愛情が感じられて良かったですよね。

> 最後に橋を渡って「向う岸」へ行ってしまうのが象徴的でした。

ああ!!そういうことですね。
彼岸・・・そうですね。

> ヒロインに泣かせもしない、崖に立たせもしない、観客のカタルシスには問答無用。
> 暫く経ってから、「監督、鬼だ!」と思いました。(笑)

観客に、安易な着地点を与えないところが、本当に(笑)
結局、こよりに何が書かれていたのも不明のままで・・・
“宙ぶらりん”な感じも、すごいですよね~。

> くず折れて泣く所まで行ったら、「駄作」の烙印を押されてたと思うし、観ても記憶に残らなかったと思います。

そうなんですよね!! ここで、泣き崩れでもしたら
そこらに数多ある安っぽい作品にしかならないんですよね。
観客の(予想)予定調和から脱することもなく、こんなに強烈な印象・記憶を残さないと思います。

> そう考えると、ここまで創っても「傑作」と「駄作」の差は紙一重の所に有るんだ、と思って怖くなりました。

本当にそうですね。何が分けるのか。
きちんと見極め、あそこで、物語を切る。
本当に、その構成力・編集・周囲を納得させたであろう労力。
どれをとっても、尋常じゃない気がします。

> 「高校三年生」>好きな歌だったんですけど、きっとこれから、このメロディを聞く度に「忌々しい気分」になるような予感がしています。(笑)

確かに、あの牧歌的な雰囲気はあの曲の良さなんですが
この作品をみると、違った印象を持つようになると思います。

あとは、商店街の主人たちも・・・どうなの?という気がします。
話の内容がそうだから仕方ないのかもしれませんが
文句を言いつつ、麻雀をしているだけだったり。
首を吊った、食料店主人を奥さんが擁護してもいまいち、説得力が・・・
(このことが幸司はスーパーにするのをある種、ためらった理由の一つかもしれませんね)
勿論、一番の不満の理由は・礼子の処遇なんでしょうけど。

最大の断絶というのか、世代間の考え方の違いとして
幸司は礼子が今まで“犠牲”になったと感じていますが。
礼子にとっては“犠牲”でもなんでもない
当然のごとく嫁いだ家(店)を守るために、生きた。

その感覚の違いは大きいものだったと思います。

だからこそ、最後に幸司の想いを、嬉しいと口にしつつも
それ以上は、踏み込ませない。
それこそが、彼女の生き方そのものを一番、否定するものだったからと思います。

“愛”があれば、とある程度のことは肯定される作品が多い中
あえて、それを選ばないこの作品は、悲劇性を帯び
先日観た、『カサブランカ』も“愛”を選ばず
“大義”(あるいは彼女の、真の幸せ)を選ぶが故に
名作・傑作の称号を冠するに値する作品になった気がします。

本当に、いい作品を観る機会をありがとうございました!!
by: きみやす * 2013/10/11 18:30 * URL [ 編集] | UP↑

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