白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件白ゆき姫殺人事件
(2012/07/26)
湊 かなえ

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白ゆき姫殺人事件」(感想
(著)湊 かなえ

ある地方都市で
化粧品会社に勤める女性会社員が殺害される。
その美貌と扱っていた商品の名前から
事件は“白ゆき姫殺人事件”と呼ばれることに。

はじめは同僚たちの噂から
それが次第に、週刊誌・SNSを通して
拡大・過熱していくことに
一人の女が“犯人”として扱われることに・・・

果たして彼女は犯人なのか。

多数の証言から浮かび上がってくる“真実”とは?

面白かった。
やっぱり、この著者はこういうイヤ~な話を書かせると本当に上手い。

同僚Ⅰ・同僚Ⅱ・同級生・地元住民・当事者と章立てされたこの作品。
語り手と聞き手の二人称で話がほとんど進んでいきます。

語っている言葉(情報)は正確なものもあれば
バイアスがかかっている情報もあり

その情報を取拾選択していった先には
なんとも言えない、模様が浮かび上がる仕組み。

最近読んだ『迷宮』と似ていて
一つの事件とその周囲を描いているのですが
マンマローなるSNSが重要な要素になるのが今の世相を反映している気がします。

ネタバレの為 追記
まず、何が気持ち悪いかって
登場する語り手たちが基本的に信用がおけないところが・・・。

意識的・無意識的に嘘をつく。
そして、その情報が他の人間により、真実かどうかが明かされる。
読者が情報の更新を行っているうちに

実は、聞き手もだんだん信用が置けない人物であることに
気がつかされます。

この辺の構成も見事です。

実は作品の最終章である当事者の章で真犯人が明らかになるのですが

週間誌の記事やネット上に上げられている文章を見て
傷ついていた容疑者は真犯人が判っても
真犯人に対する怨みよりも同じように
ネット上などで晒し者になる被害者に強くシンパシーを感じるのですが

そこで終わらないのが、湊かなえという作家の性格の悪さ(笑)

最終章の後に“資料”と呼ばれるものが存在していて。

(架空のSNSである)マンマローでの聞き手・語り手たちの態度。
匿名性が透けてくるとその人間の本質が浮かび上がるといわんばかりに

取材時とSNSでの差を感じたり
取材した内容と
(同じく架空の雑誌である)週間太陽に掲載された記事内容の差。

これはこの記事を読んだ人間ならば
容疑者はなんて、酷い人間だろうと思うように作られている。

読み終えたあとに改めて
書かれた容疑者の気持ちになって
その記事だけ読んでみると
これが、なかなか堪えます。

(あと真犯人がわかった後の
雑誌の対応の上手さ、これだけでも読む価値はあるかも)

当事者たち、周囲の者たちだけでなく
全く関係なく事件を楽しむ者も存在したり

雑誌名で態度を変える語り手たち。

真摯な気持ちではなく、単なる自分のキャリアアップの為に
人一人の人生を狂わせてしまう聞き手。

そして、同じように簡単に、人生を狂わせてしまうことの出来るネットの怖さ。
そんなものを感じさせてくれます。

あとは、登場人物たちにはわからない事柄を読者にだけ
判るように提示する著者の上手さ。

例えば、もともとの始まりである、同僚と聞き手の関係。
同僚と聞き手の温度差。
一章目と聞き手のマンマローでの呟きを確認しながら読むと笑ってしまいます。

あとは容疑者と『赤毛のアン』

読書好きな容疑者は子供の頃、自分を“アン”と名乗ったり
幼馴染みの女の子を“ダイアナ”と呼びます。
初恋の相手とのある出来事をアンに恋する少年“ギルバート”とのある挿話と重ね合わせます。

ここまではまぁ、いいんですが。

幼馴染の女の子は今でも
“ダイアナ?オレをそう呼んでいいのはアンだけ”
そして“オレはダイアナじゃなく、ギル”とまで口にします。
(てっきり、謝罪をしたいのかとも思ったのですが・・・)

一方の容疑者にも“ダイアナに思いをはせ”であったり
“ダイアナと同じ瞳”をもつ男性に惹かれる描写があったり。

精神的な同性愛の傾向があることを暗示させます。

(幼馴染の方はそれを自覚していて、容疑者の方は自覚していないところも芸が細かい)

次は“姫”と“王子”
まず、事件の名前・被害者の仮称・容疑者の名前・ネット上の人物・HN等にまで
姫という文字は多く、登場してきます。

反対に“王子”と呼ばれる人間は少なく2名?程
それもその名に相応しくないくらいダメダメな人たちで
この辺にも著者の悪意が感じさせます。

(女性は幾つになっても、密かにお姫様を夢見るが
 迎えに来てくれる王子は現実には存在しないってことでしょうか)

最後は“犯人”と“ボールペン”
資料の最後に真犯人のブログが掲載されています。

その中でも“犯人”という記事。
その中で被害者の一言で真犯人は犯行を決意するのですが
マンマローに書かれていた文章では

(ボールペンを盗んだ)犯人がわかったのか
(「白ゆき」を盗んだ)犯人がわかったのか
特定できていません。

国公立大学出と書かれていますが
真犯人も容疑者も同じく国公立大学出で
被害者よりも仕事が出来る。

被害者も“盗んだ事実”を
将来、自分よりも出世しそうな相手を
破滅させる目的で使おうと思っています。

そこで真犯人は犯行におよぶのですが
ここでの“犯人”は真犯人なのか?
それとも容疑者なのか?

「白ゆき」を盗んでいた真犯人である場合、話は(比較的に)すっきりとします。

ただ、容疑者である場合
真犯人は早とちりして被害者を殺害したことになり
しなくても良い殺人を、早めに実行してしまったという皮肉な構図となります。

かつ、容疑者に罪を被せようと画策していくので
それも二重の皮肉と言えるかもしれません。

結局のところ
重要なことは、登場人物たちはあえて口にしなかったりするので
自分の乏しい読解力ではこんなことしか思いつきませんでした。

それにしても
真犯人も容疑者も
そして、被害者ですら、善人でないことに感動すら覚えてしまう作品でした。
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