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事件屋稼業

事件屋稼業」(感想
(原作)関川 夏央
(漫画)谷口 ジロー



今月は本当にこの作品を何度も何度も読み返していました。

要所要所に登場するアフォリズム(警句)
この作品の独特の魅力の一つなのですが

初期の大沢在昌作品がそうであったように
その多用は作品そのものを軽くしてしまう危険性を
多いに孕んでいるように思います。

ただ、この作品はその軽さを
谷口ジローの“線”と“絵”で現実に着地させていた気がします。

最初に読んだのは、高校の終わりか、大学の始めの頃だと思いますが。

事件屋稼業の最初の単行本のラストカット。
フェイク・エンディング

はー。恰好いいわ・・・。

主人公・深町丈太郎は探偵なのですが
別れた妻と娘がいます。

娘・カオリの言葉を引用すると

橋の下を多くの水が流れて
いきました 日は暮れて
鐘も鳴りました
歳月が流れても探偵は
変わりません

娘は不幸な家庭環境にもかかわらず
グレもせず まっすぐ歩いていると
いうのに
父親はいつまでも
橋の上にたたずむ不良のままです


それに対するかの様に丈太郎は探偵とは何か語ります。

探偵とは職業ではない

生き方だ

きわめて危険で同時に美しい
誰もが軽蔑しつつ
うらやむ生き方だ

たとえていうなら・・・・・・・

銃口にとまった
蝶のような
ものだ


中学生の娘の方がしっかり現実を見据えているのですが
父親は探偵の“定義”にこだわる。
この辺の差がこの作品の面白さの一つでもあります。

深町の年長の友人でもあり、この作品のもう一人の主人公と言うべきヤクザの黒崎さん。
カオリのインタビューに対して。

ヤクザとは
呼ばないで
くれ

過激な企業家
とでも呼んで
もらおうか

探偵も
過激な企業家も
ルポライターも
似たような商売だ

ひとの
いやがること
隠したがることを
調べる

共通して必要な資質は
三つある
頭脳 細心さ それから
乾いた功利主義だ

精神主義と感傷は
邪魔なだけ
でね

深町も
そこんとこを
もうひとつわかって欲しいな 


そう言っていた黒崎も
連載が進んでくると、現実の日本と同じく、バブルを迎え
暴対法の影響等を受けていきます。

深町「ヤクザってのは・・・」
黒崎「“緊張感に あふれた フリーランサー”といってくれ」
深町「緊張 しすぎて ボケがきたん じゃないですか」
黒崎「酒場で バーボンを あおること 寝る前に 歯を磨くことは 忘れても 銃を 磨くことは忘れない
   そういうのは 四つの現代化以前のギャングさ」
(中略)
深町「なんです? その四つの現代化ってのは」
黒崎「喧嘩じゃ 死なない―― 
    ミエを 張らない――
    知は力なり―― 
    損をしない限り他人に親切―― 」

本当に印象的な登場人物が多い作品でした。

ラストのコマであったり、台詞によって、しっかりと余韻の残る話も多く。
歳を重ねて初めて分かることもあり
その内容や、絵の豊潤さに驚かされました。

原作者が『新々事件屋稼業』について言及する部分が最終巻でありましたが
もはや、それもかなわぬことになってしまいました。

『犬を飼う』『欅の木』『歩くひと』『神々の山嶺』
そして『孤独のグルメ』も大好きでした。

谷口ジロー先生のご冥福を
心からお祈り致します。
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