「
ガタカ」(
感想)
(監督)
アンドリュー・ニコル(主演)
イーサン・ホーク今回の“ブログDEロードショー”の作品はこちらです。
遺伝子工学の進歩により
胎児の段階で劣性遺伝子を排除することが出来るようになった近未来。
処置をせず、自然の形で生まれた主人公・ビンセントは
心臓が弱く、30歳までしか生きられないと宣告されていた。
劣性遺伝子排除されて生まれ
父の名を継いだ弟・アントンと比べて
“不適正者”であると思っていた。
度胸比べの遠泳で弟に
勝った彼は家を出ることに・・・
宇宙飛行士になる為に
優秀な遺伝子の持ち主であるジェロームと契約を結び
彼の遺伝情報を貰うことで
“ガタガ”に入社する。
再見です。
映像は綺麗。
スタイリッシュっていうのか
独特の美意識が感じられます。
ガタカの本社ビルだったり
綺麗すぎて、むしろ能率が心配な職場(笑)とか
ロケットがバンバン飛んで
宇宙飛行士を輩出する会社があるかと思えば
車はクラシカルな(電気)自動車だったり
お酒を飲むところは昔のクラブ風。
ロケットに入る前の通路とかも
70年代のSFを想起させるだけど
素材が良いのか。
ギリギリ、おしゃれに見える不思議さ(笑)
以下、ネタバレを含みます。
ただ、脚本がなぁ・・・
“不適正者”であるが故に
遺伝子の優秀さのみが偏重される世界から遠くへ行きたい。
宇宙飛行士への憧れ。
ここの動機はよくわかります。
家を出る際に
家族写真から自分の顔だけを剥ぐところなんて
胸に突き刺さります。
ガタカに入っても
毎朝、爪を切ったり、遺伝情報を残さないように
執拗に体を洗う主人公。
まぁ、ここで他人を騙る大変さはよくわかります。
ただ、どう考えても、穴だらけなんですが、その計画(笑)
目は手術しちゃだめ→コンタクト。
身長足りない→骨延長手術。
まず、この時点で???
それに、宇宙に行った後の遺伝子検査があった場合
どう乗り切るつもりだったんだろ?
計画、甘すぎ。
遺伝子”が重要ってことが言いたいのは分かりますが
ガタカに入社する際に必ず僅かに採血されるシステムも・・・
指紋認証の方が痛みはないっていう気がします。
顔写真(映像)観ても、気がつかないっていっても
“遺伝情報”を優先する風潮を口にはしていましたが・・・。
少々、無理がありますね。
あとはジェロームについても
これを言ったら話が成立しませんが
それだけ遺伝子が発達してる未来なら
再生医療でその辺は回復させることは出来ないのかな?
おそらく遺伝子に縛られるのではなく、本人の努力で克服できるというのが
この作品のテーマだと思うのですが。
ビンセント“不適正者”でも努力する人
“適正者”が遺伝子にあぐらをかいている人たちって風な
単純な分け方が感じられて
いまいち、納得が・・・
ユマ・サーマン演じるアイリーンがその中間ということでしょうが・・・
適正者でもプレッシャーに耐えかねて自殺未遂を起こす。
適正者でも兄のことは思い出せない。
ついでに遠泳で二度負ける(笑)。
適正者でも人を殺す。
これだけ、書いてたら
どっちが人間として強いのか、わかりません(笑)
“出生よりも後天的な努力や思い”が大事だよってテーマが
伝わらない気がします。
間違ったエリート意識の方が遺伝子よりも問題あるっていうのが
言いたかったのかな・・・
あと、疑問に思ったのは
ビンセントもあるシーンで暴力を使います。
そして、適正者も暴力を使います。
つまり、暴力性というものは遺伝子に左右されない?
後天的な資質(学習)もしくは、人間は暴力という手段を
捨てることができない、ということなのかな。
ラストでは
「え?その格好で宇宙、行くの?」
「ジェローム!!おい、ちょっと待て!!」とか。
初見の時と同じ反応をしてしまいました。
それにしてもジェローム・・・。
2階の窓からアイリーンを見る姿。
ビンセントを守るため、必死で階段を登る姿。
それだけ、高給とってるなら
エレベーターをつけることぐらい考えなよ・・・
彼なりに、ビンセントを愛していたんだろうな。
直接の描写はなくても
酔ったジェロームを抱きかかえるシーンとか。
そんな印象を受けました。
ある意味、ジェロームにとって
ビンセントが外の世界の窓みたいになっていたのかも・・・
自分には、交通事故で脊髄損傷して下肢麻痺
車イスの友達がいるのですが
彼は奥さんも子供もいて、とても明るい人物なんですよね。
彼らを知っているだけに
ちょっと、ジェロームの扱い
特に、ラストは許容しがたいものがあります。
個人的には、ビンセントも、自分の正体を
自ら明かして、その上で宇宙飛行士として
宇宙に行ってもらいたかった。
心疾患もなんとか出来ないの?その近未来の技術は(笑)
ジェロームもまた、夢を見つけ
自分の旅を(人生を)歩んでもらいたかった。
そして、金メダルじゃなくても生きていけることを
証明して欲しかった。
遺伝子偏重しすぎる、その社会の
ある種の洗脳から
自由になってもらいたかった。
メダルの色やそもそもメダルの有無だけが
人間の価値じゃないと思って欲しかったなぁ。
ビンセントがガタガ社で
自分の力で努力している姿を見ていた訳なんだから・・・
あと、ほとんど話に関係ないのですが
個人的に嬉しかったのは
アーネスト・ボーグナインの姿が見れたことです。
『超音速攻撃ヘリ・エアーウルフ』のドミニクや
『ワイルドバンチ』のダッチを思い出しました。