それにしても
『それでも、生きていく』がすごいです。
ここ数年間で
個人的に、一番色んなことを考えさせられたドラマだと思います。
主人公・深見陽貴(瑛太)の友人でありながら
妹・亜季を殺した犯人でもある
三崎文哉が、物語の全面に登場するようになり
中盤から、一気に話が動き出します。
娘を殺された母親(大竹しのぶ)とのやりとりは
もう、涙なしで見れませんでした・・・
娘を殺され
文字通り鬼気迫る感じの母親の言葉が
まるで届いていないという苦い現実。
成長を意図的に
もしくは無意識に(防衛本能で?)
止めたような口調の文哉。
人を殺した現実に
真っ直ぐに向き合おうとしない彼の姿には
“更生”という言葉が虚しく感じられます。
問題を抱える子供たちの更正の為に
農園を経営する草間(小野武彦)が
文哉の父(時任三郎)に放つ一言。
それまで、温和で文哉を庇うような言動をしていた草間が
文哉の妹・双葉を見て
「あんたにも、娘がいるんだ・・・」と
虚脱状態だった彼が
なにかのピントが合ったかのように
もしくは、スイッチが入ったように
怒りと憎悪を露わにするシーンだったり
陽貴の弟で、亜季のもう一人の兄
でもある耕平(田中圭)。
いままで、ずっと、有名なマンガの台詞を引用してきていた
彼が、母親に向かって
初めて、自分の言葉で
学生時代、カラオケに行って「希望」とか歌っている
自分に感じた違和感を口にするシーン。
これは気軽に「カラオケ、行かない?とか人に言ってみたいです」って
言っていた兄との対比もあるかもしれません。
事件によって
人との接し方が上手く取れなくなった兄だけでなく
普通にカラオケに行ったり
器用に生きているようにみえた弟も
事件の影響がいかに
大きかったのがわかります。
この“重い”ドラマの唯一の救いともいえる
主人公とヒロインの会話(関係)
“深見さん”と“遠山さん”と互いを呼ぶ感じ。
この名字の距離感がとても好きです。
被害者の兄と加害者の妹。
二人の距離が、近づいてはいるものの
“普通”の若い男女には
なかなか移行できない感じ
個別に、同じ事を考えている描写もあったりして
本当に、微笑ましいです。
この満島ひかりという女優さんの
姿勢や表情が、素晴らしい。
上手く、表現できないんですが
謝ることが日常化している感じというか。
肝心のところで人に譲ってしまいそうな
自罰的というのか。
少し、猫背で、うつむき加減で
人生に、大きな希望をもったりすることもない
その分、内面に
鬱屈した、激しいものを抱えている部分があったりする
感じだったり
体の動かし方(挙動)が、独特で
その不器用さや
兄に対して感情を爆発させるシーンでも
人を殴ったり、蹴ったりしたことのない人が
感情に任せて、思わず動いてしまった。
そんな、“型”の無い感じが
妙に説得力があって
本当に、「上手いな~」と思わせてくれます。
・・・思わず、出演作の『愛のむきだし』を観てしまいました。
まぁ、これはこれでスゴかったけど・・・。
これもまた、長いし、いろんな意味で濃かったので
いつかゆっくり感想を書いてみたいです。
あとは、被害者の母と加害者の母(風吹ジュン)の
“母親対決”も鳥肌ものでした。
お互いに本音をぶつけ
「それは・・・その立場の人が言ったらいかんだろ?」とか
最後の大竹しのぶの言葉とか。
よく、そのセリフがでてくるなぁ、と
脚本に打ちのめされっぱなしです。
脚本家の坂元 裕二は『東京ラブストーリー』が
あまりにも有名ですが
この『それでも、生きていく』では
それをひっくり返すというのか。
トレンディ・ドラマ(笑)の否定というのか。
当たり前に、地に足つけて生きていく。
ある意味、“脱東京”というのか
主題歌の『東京の空』の歌詞を含めて
東京でないところで生きていく、というのも隠れたテーマかもしれません。
5話のセリフ
(深見)「
バイト?時給、いくらっすか?」
(遠山)「
900円です」(自慢げ)
「
結構、いい方じゃないすか」
「
ラッキー、だったんです」
「
何か、買うんすか?」
「
あー、何か、買おうかな・・・」
「
服 買った方がいいんじゃないすか?」
「
え? わ、私、何か変・・・・変な、服着てますか?」(急に焦る)
「
っていうか」
「
変ですか」(あんまり聞いてない)
「
今日、東京に行ってきたんですけど」
「
あ、はい」
「
結構みんな、おしゃれ、でした。
こういう感じの人たち (互いを指差しながら)
あんま いなかったっすよ」(自分の服もつまみながら)
「
ああ・・・うーん。私は まあ こういうので十分です」
「
僕も、まぁ、こういうので十分ですけど」
さりげなく、東京に価値を感じていないのが
表現されていて
ちょっと『北の国から』の純のセリフ
「東京はもう、俺卒業したんだ」を思い出しました。
書きたいことは、まだまだ色々あるのですが
また、最終回後にでも。
あとは・・・・“白いキョーダイン”こと『フォーゼ』
「正確には、白いスカイゼルじゃね?」とご指摘をうけましたが・・・
まぁ、それは、さておき。
アメリカの学園モノを上手く取り入れて
結構、面白いかもしれません(笑)
決して、格好は良くないけど・・・・