「
夏期限定トロピカルパフェト事件」(
感想)
(著)
米澤 穂信<小市民>シリーズ第2作。
再読。
序章 まるで綿菓子のよう
現在テスト準備期間中
七月。控えるテストは一学期末考査。
(高校二年の夏)
主人公の一人である小鳩君は夏祭りに出かけます。
そこの夜店でクラスメートを、見かけたときの対応が
人間関係に冷淡なわけではないと断りをいれながらも
心を開かない人間性が読者には提示されます。
(同様の描写がコミックス版の新作「小市民の休日」でも
第3作『秋期限定栗きんとん事件』でも繰り返されます)
小佐内さんの登場。
狐面のお面をもち、昔のクラスメートから顔を隠す。
彼女の性格を表した文章を引用すると
小佐内さんは、甘いものを二番目に愛している。
甘いもののためなら、体力と資金の許す限りどこまでも行く。
・・・・そして、そんな小佐内さんが一番愛しているものは、実は「復讐」だったりする。
見かけは可愛らしいけれど、彼女はカウンターパンチャーのようだ。
より強く殴り返すために、誰かが殴ってくれるのを待っていた。
その性格、『狼』である自分を、小佐内さんは封じ込めようとしている。
時間の経過を表す記述もあります。
・・・・・去年の春から夏にかけてぼくと小佐内さん鷹羽中学は結果的に、有印公文書偽造の犯罪を暴いた。
そのためかどうかわからないけれど、五人の人間が逮捕された。
(中略)その反省の上に立ち、ぼくたちはその夏以降、ごく大人しい一年を送ってきた。
これで前作『春期限定いちごタルト事件』が高校一年の春から夏にかけて
であり、それ以降は大人しく小市民を目指していた事がわかります。
そして、小佐内さんの行動から
「相手には見られたくないけど、こっちは見たい」相手が夜店がいることがわかります。
そして最後のセリフ
「わたしね。・・・何だか、素敵な予感がしてるの!」
その笑顔に、ぼくも笑って応える。
夏休みに、素敵な予感か。
最後まで読んで、読み返すと
すでにこの段階で二重の意味が込められていることに気がつかされます。
第一章 シャルロットだけはぼくのもの。
まず、開始早々に驚かされる仕掛けがしてあります。
高校二年の夏休みと <小佐内スイーツセレクション・夏>開始。
すでにこの表の中で<桜庵>や<ハンプティ・ダンプティ>
<アールグレイ2>などのお店が列記されています。
同著者の『クドリャフカの順番』でもありましたが
こういった表を作るのが得意(好き)なんですね。
電話を受けている相手。
ケーキのお味は実は副次的なことなのだけど。
この後の展開や次作『秋期限定栗きんとん事件』でも繰り返し表現されますが
小佐内さんの『狼』と同じく小鳩君の『狐』
一方ぼくが改めなければならないのは、生まれつき、余計なことに口を挟んでしまう性格。
岡目八目よろしく人のやっていることに横から口を出し、よせばいいのに知恵を働かせ知った風なことを言って、結局多くの人に嫌な思いをさせた。
この『狐』をこそ、ぼくは「小市民」概念によってねじ伏せなければならない。
この章では端的に“知恵試し”の相手を同志である小佐内さんに仕掛けます。
最後の小佐内さんの謎解きそしてセリフによって
読者にも小佐内さんが小鳩君と同等の知恵を有していることと
小鳩君の『狐』の業の深さが垣間見ることができます。
第二章 シェイク・ハーフ
カウンターにロックというかヒッピー風の人。
堂島健吾登場。
小鳩君と小佐内さんが一緒だった鷹羽中学で
中三の春に補導された女子ばかりの薬物乱用グループ。
そのグループのリーダー石和馳美。 補導され保護観察になった。
川俣 さなえ (船戸高校二年)
その妹 かすみ 堂島健吾との関係。
堂島健吾が残した“半”のメモの謎を解くことに。
そこでの小鳩君の行動。
謎を前にして(喜びながら)探偵的行為に望む姿。
事の真意をつかむには思考を散らすのだ。
どうして彼女は、ぼくが謎を解いた瞬間に、あんなに嬉しかったのだろう。
第三章 激辛大盛
補導されたリーダー石和の性格 川俣をレンチで殴ろうとした。
第四章 おいで、キャンディーをあげる
「これがこの夏の思い出の、集大成なんだから」
三章と同じ日 23時
8月18日午後11時20分頃
石和馳美は川俣さなえから連絡をうけた。
川俣は石和に翌19日の小佐内ゆきの行動を伝えた。
小佐内の母登場。
小鳩君との会話で
中学時代の小佐内さんについて訊いてくれれば、いくつか話せることもあったのに。
母親は娘の本性には気がついていないことがわかる。
8月19日午後十二時五十分頃
木良市本吉町三夜通りで待ち伏せしていた石和たち三人は拉致し、連れ去った。
高揚する小鳩。
グループの一人 北条智子。
運転席に北条 後部座席に三人が座った。小佐内は中央。
今回の計画に参加しなかった川俣に不満。
五人(北条・上野・早田・林・石和)
堂島は左手の指を怪我し全治三日。
今回に限って寛大な理由。
終章 スイート・メモリー
謎解き
内通者を持たせていたことが明らかに。
<小市民>の関係解消。
今回は高校二年一学期から夏休みまで。