「
走れ!タカハシ」(
感想)
(著)
村上 龍ヨシヒコが走るとき、何かが始まり何かが終わる。
「ファーストベースにヘッドスライディングしても
それが様になる日本でも珍しいプロ野球選手」
と著者が激讃する広島カープ高橋慶彦遊撃手の輝ける肉体を軸に、野球を楽しむ普通の人々を配した軽快な短篇集。
再読。
(さ~にんさん ありがとうございました)
おもしろい。
再読して、ホントに驚きがあります。
「村上龍ってこんな書き手だったんだ!」
どうしても
『コインロッカー・ベイビーズ』
『半島を出よ!』
のような大作の印象や
最近はどうしてもブームに“乗っかる”イメージが
強かったのですが。
タカハシヨシヒコが
どこかでかかわってくる
11のストーリー
「ありえない」展開が多くて笑えます。
以降の作品の原型ともいえる部分やキャラクターもありますし
相変わらず、確信犯的に下品だし
個人的に好きなのは
PART1の彼女(?)の父親から告訴をちらつかされる高校生の話
ストーリーに直接は関係ないけど、
「キヨシちゃんその山梨のブドウおいしいでしょ?」とかん高い声で言った。
今から考えるとどうでもいいことだがその時一瞬オフクロの尖った顎に蹴りを入れてやろうかと思った。言ったろ。俺は今まで一万回くらい言ったろ? ちゃんなんて言うな、キヨシちゃんなんて呼ぶなよ、ブドウはうめえよ、うめえから食ってんだよ、山梨なんて知らねえよ、知らねえよ俺は何にも知らねえ人間なの、ただうめえから食ってんだよ。文句あっか。黙ってろ。
PART2の男パン助(笑)として過ごしている十七歳の男の話
PART3のタイトル。
海へ行って陽焼けをしてきただけではだめで、ただ女を
モノにできなかったということだけでオレだけどうして
こう差別されなければならないのだろうか?
PART4のタイトルとそれとは全く関係のないわらしべ長者な内容。
PART10の女房に逃げられた陸送の運転手の話。
特に“オレは自分のことがわからない”と繰り返すあたりと
徐々に変わっていく様が良かった。