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蒲公英草紙 常野物語

蒲公英草紙―常野物語 (常野物語)蒲公英草紙―常野物語 (常野物語)
(2005/06)
恩田 陸

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蒲公英草紙(たんぽぽそうし) 常野物語」 (感想
(著)恩田 陸 

たんぽぽそうし。
ふっとその名前を思い付いた瞬間を
この歳になっても思い出すことがあります。
あの麗らかな春の午後
暗い家の中から窓の外を眺めていた幼い頃の私を。

(中略)
そして、あの幾つかの季節
あのお屋敷で過ごした季節が私にとって
その宝石だったのです。

(本文より)

今回は二十世紀を迎えようとする
東北の山間の村
地元の大地主槙村家のお嬢様である
聡子の話し相手を務める少女・中島峰子の視点から
語られる二つの一族の物語であり
二人の少女の成長と友情譚でもあります。

タイトルの蒲公英草紙(たんぽぽそうし)
は峰子の日記の名前でもあります。

それを配慮した
装丁もきれいで好感が持てます。

峰子の視点から様々な人物が語られます。

槙村家の次女でありお嬢様である聡子。
彼女の存在がこの物語に“光”を感じさせます。
彼女の成長と変化もこの物語の見所の一つです。

峰子を「ねこ」と呼ぶ槙村家の次男廣隆。
彼の変化もまた、好ましいものです。

魅力的な人物(猫も!)が登場し
峰子と同じ視点で
槙村家の人々と知り合うことが出来ます。

中でも、槙村家の客人である
洋画絵師の椎名馨と
仏師永慶の対比は素晴らしい。

特にこの椎名馨というキャラクターの造形が
良いです。
ある意味、著者の代弁者とも言っても良いくらいです。

ある人物に語りかけるシーンでは
内容も含め、鳥肌がたつ程でした。

そして、前作「光の帝国」の中の最初の短編
「大きな引き出し」に出てきた春田家の先祖も登場します

春田家の長男光比古。

彼の能力が生かされた部分と
(正直、反則だよな~とは思うのですが)
別れの言葉には
思わず、目頭が熱くなりました。

それに比べて、ラストは唐突な印象を受けます。
急に夢から引き離されたような。
現実に引き戻されるというか。

話の中でも再三にわたって示されてきた
事柄ををあえて最後にもってきたのか。
その必要があったのか否か。

峰子の問いかけは胸に迫るものがありますが。
評価が分かれるところかもしれません。

・・・それにしても、蒲公英(たんぽぽ)なんですね。
恥ずかしながら、初めて知りました。
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