「
The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day」 (
感想)
(著)
乙一 (イラスト)
荒木 飛呂彦『ジョジョ』シリーズ第4部・杜王町を舞台に起こったもうひとつの事件。
構想・執筆2000日以上、鬼才・乙一が渾身のノベライズ!!
かなりのファンであるらしくJOJOの『あの』表現を
きちんと言語化し、成功しています。
広瀬康一、岸部露伴や東方仗助、虹村億秦もしっかり表現されています。
ただ、やはりこれは紛れも無い乙一作品でしょう。
独特の笑いの要素も荒木作品の敬意として表れます。
あの魔少年的な子はだれだったのだろうとか (P33)
多少ゴージャスにちかづいたような気がしなくもなかったとか (P37)
これまで食べたパンの枚数をおぼえている人間がこの世にいるだろうか。
(P53)
という風に。
それ以外にも「ドリンクバー部」のくだりや (P34~P35)
個人的には小説を書くヒロインが登場し
作者の経験に投影したような、それでいて繊細さも感じさせる描写が光ります。
趣味は【読書】とこたえるならよいが【執筆】とこたえたら
場がおかしな雰囲気になるのではないかとおもった。
ノベライズの難しいところは
既存のキャラクターに新たな価値をつけないようにする。
同じく、ノベライズオリジナルキャラクターは
既存のキャラクターとの比較が常に行われるといったところでしょうか。
そんな中で今回の(本編の主人公ともいうべき)蓮見琢馬というキャラクターは
何とかギリギリのところにいると思います。
あらゆる物事をおぼえることができ、劣化もせずに【わすれる】ことができない。
ここら辺の描写は流石です。
本当に忘れる事ができないというのは怖いことですね。
あと、スタンド戦をここまで書けるとは思っていませんでした。
あれはあくまで荒木飛呂彦という稀有な才能の持ち主にしか
生み出せないものだと思っていたので・・・
JOJOの醍醐味である策の読みあい、スタンドの能力設定にしても上手いです。
読みながら、自然に脳内ででコマ割りをしていました。
ただ・・・・この「復讐の完成形」は個人的には好きではありません。
正直言って不快です。
神様、あの母と子に慈悲を。
・・・・・う~ん。それでいいのか???
あと、読んでいていくつかの点が気になりました。
まず、ひらがなが気になりました。
前述の“こたえたら” とか“おもった”の部分です。
"漫画の連載当時”として登場人物自ら語るのはどうも・・・・
興醒めするというか。
作品世界から引き離されるというのか。
装丁や色々な部分が素晴らしいだけに。
残念です。